北長野駅前に立つと、いつもより空が広く感じられました。
灰色の防音シートに包まれた建物の前で、重機がゆっくりと腕を伸ばしています。鉄をつかむ鈍い音が、乾いた冬の空気に溶けていきます。
昨年三月末に閉店した「ながの東急ライフ」。
地域の方にとっては、ただの商業施設ではなく、日々の暮らしの一部でした。仕事帰りに立ち寄る場所であり、待ち合わせの目印であり、季節の移ろいを感じる場所でもありました。
閉店してからというもの、周辺の人通りは目に見えて少なくなりました。
夕方になると、少しだけ寂しさが広がります。
あたりが静かになると、建物の存在の大きさをあらためて感じるものですね。
跡地に何が建つのか、まだはっきりとはわかりません。
マンションデベロッパーが購入したと聞いていますから、分譲マンションになるのでしょうか。
住居のみなのか、商業施設を併設するのか。
周辺にお住まいのご年配の方々は、「また歩いて買い物ができる場所ができるといいね」とおっしゃっています。その言葉に、この街の願いがにじんでいるように思います。
一方で、少し足を延ばせば、新しい動きも見えます。
ディスカウントスーパーマーケット「ラ・ムー」は六月の開店に向けて建築が進み、
分譲マンション「アルファステイツ北長野」も着実に姿を現しています。

解体と建築。
壊す音と、つくる音。
同じ空の下で、それぞれが進んでいます。
長くこの仕事をしていると、街が変わっていく瞬間を何度も見てきました。
建物は姿を消しますが、そこで暮らした時間までは消えません。
記憶は、そこにいた人の中に残り、やがて新しい景色の中に溶け込んでいきます。
古いものがなくなると、胸の奥に小さな空洞ができるような気がします。
けれど、その空間があるからこそ、新しいものが入ってくる余地も生まれるのかもしれません。
マンションが完成すれば、新しい世帯がこの街にやってきます。
スーパーが開店すれば、人の流れも変わるでしょう。
駅前にまた灯りが増え、夕方のざわめきが戻る日も来るはずです。
変わっていく街を見つめながら、私は思います。
寂しさと期待は、案外、同じ場所に並んでいるものだと。
いまは少し静かな北長野駅前。
けれど、この静けさも、きっと次の景色へ向かう途中の時間なのでしょう。
重機の音の向こうで、電車がいつものように走り抜けていきます。
その規則正しい音を聞きながら、私は心の中でつぶやきました。
大丈夫。
街は、また息を吹き返します。
そして私たちも、その中で変わりながら、変わらずに暮らしていくのだと思います。

